今、東京では2つの「フランス・ブルターニュ」をテーマにした美術展が開催されています。
そのうちの一つ、上野の国立西洋美術館で開催されている「憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」です。
ブルターニュといえばガレットやクレープを思い出しますが、食べ物だけではなく、多くの芸術家たちが活躍しています。
フランスの北西端、大西洋に突き出た半島を核とするブルターニュ地方は、芸術家と縁の深い土地です。他とは異なる文化と美しい風景を持つことから、19世紀から多くの芸術家を世に送り出してきました。
19世紀後半から20世紀はじめにかけ、モネ、ゴーギャンら多くの画家たちがフランス北西端のブルターニュ地方を訪れ、この地を作品に描きとめました。
黒田清輝、藤田嗣治といった日本の画家たちも同時期に渡仏し、パリからブルターニュを訪れています。
本展では、国立西洋美術館の「松方コレクション」を含む30ヶ所を超える国内所蔵先と、海外の2館からブルターニュをモティーフにした作品約160点を精選し、各種資料と共に展示しています。
I. 見出されたブルターニュ : 異郷への旅
II. 風土にはぐくまれる感性 : ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神
III. 土地に根を下ろす : ブルターニュを見つめ続けた画家たち
IV. 日本発、パリ経由、ブルターニュ行 : 日本出身画家たちのまなざし
の4つの章で構成され、とりわけ多くの画家や版画家たちがブルターニュを目指した19世紀後半から20世紀はじめに着目し、この地の自然や史跡、風俗、歴史などをモティーフとした作品を展覧することで、それぞれの作家がこの「異郷」に何を求め、見出したのかを探っていきます。
I. 見出されたブルターニュ : 異郷への旅
1886年9月から11月にかけてのベリール滞在中、モネは手つかずの自然が残るコート・ソヴァージュの風景を繰り返し描きました。
クロード・モネ 《ポール=ドモワの洞窟》 1886年 油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館蔵
クロード・モネ 《嵐のベリール》 1886年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)蔵
1826年にターナーは初めてブルターニュの地を踏みます。ナントへ到着したターナーは、30点余りの鉛筆デッサンに街の景観を写しとりました。ロワール川とナントの街を望む本作は、後年アトリエで制作された水彩画です。
ウィリアム・ターナー 《ナント》 1829年 水彩 ブルターニュ大公城・ナント歴史博物館蔵
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